切なる願い
たとえば、ターミナル駅の設計やプロデュースをしている方。
当然、いまどきはバリアフリー‥障害をもっている方が自立して行動できることは要請されているはず。
たとえば、電車をおりました。
そこで、貴方が歩行困難な障害をもっているものとして、乗換を実際にしてみてください。
想像力のない方(が、設計やプロデュースをしているとは思いませんが)ならば、今は重りやバネを使った疑似体験グッズもありますから、それを着用してもよいでしょう。
そうそう、多くの高齢の歩行困難な方は、ある程度視力も落ちていますから、視力は0.2くらいに設定したメガネを着用し、白内障や緑内障の障害も再現できるそれを使った方がよいかもしれません。
さて、あくまでもたとえです。上野駅上越線ホームに、今、電車が着きました。
上りは「上のホーム」か「下のホーム」につきますが、今回は、上のホームの6番線としましょうか‥。
下りたホームには階段がありました。健常者ならばラッキーです。乗換がスムースにいきます。が、あなたはどうでしょう。階段に不安があります。いや、もしかしたら、階段は事実上使えないかもしれません。
上記の想定の視力で周りを見渡してください。いや、上記の想定ではなく普通の視力(健常者の、0.7相当でよいでしょう)で見渡してみます。それでも、エレベーターやエスカレーターの案内はみつかりません。
仕方なく、ちょっと歩いて駅員さんを探すか、ホームにある乗務員室、いや、最悪ホーム売店をの方に聞くためにそれを探しても結構です。が、前提を思い出してください。あなたは歩行に自信がないのです。そのような中で、もしかしたら南よりにエレベーターがあるのに、北側にそれらの人をたずねて歩いていく勇気がありますか?
そのような中でも、駅員さんをようやくみつけました。
駅員さんはときにはみつからなかったり、いないこともあります。きっと、人件費を節約するために、必要ないときはホームにいらっしゃらないのでしょう。うんよく見つかったとして、「エレベーターやエスカレーターはどちらですか」と尋ねると、「その階段の向こうにあります」という回答。
こういう時代なので、「その階段のエスカレーターは節電でとまっているので、ホームの反対のエレベーターをご利用ください」‥などと言われることも考えられます。
さて、ここで、駅員さんにも考えていただきたい。
エレベーターやエスカレーターをなぜ尋ねられたのでしょう‥。
怠け癖のついたくだらない若者を除いては、歩行が困難で自信がない方が尋ねるはずです。そういう人に向かって、「その階段の向こう」とは何を意味しているのか。
数値的にはおそらく15〜20mくらいです。健常者にはそういう数字です。でも、歩行困難な方には、「1.5kmから2kmくらいさきにあります」と答えているのと同じです。
さて、あなたの不幸はここからはじまりました。
仕方なく、その、一つ向こうの階段の先にあるエレベーターをおります。
そして、JR内の乗換ならばともかく、上野駅はターミナル駅です。東京メトロも入っています。バスやタクシーもありますから、それらに乗換もありえます。
ここは、東京メトロ日比谷線に乗換としましょう。
6番線から5/31に動いているエレベーターは、2Fコンコースにあがるしかありません。そして、エキュート上野にむかい、入谷口にいく他なくなります。
ここで、再び日比谷線、いや、メトロへの乗換の案内を探すと、みつからないと思われます。かろうじてみつけても、階段があるのかエレベーターがあるのかわかりません。コンコースには駅員さんはホームにましていません。
たまたま多少上野駅を知っていて、公園口と反対だと判断できて、入谷口に向かっていくと、改札付近にはようやく駅員さんがいました。
駅員さん‥JRの駅員さんだからかもしれませんが、JR改札の外はあまり詳しくはないようです。エレベーターやエスカレーターを使って、仕方なく2Fに上がってきたわけですが、地下2Fの日比谷線改札までどうやっておりればよいのか‥正確に教えてはくれないようです。正確に教えてくれるとしても、この物語の前提は、歩行に自信の無い方。「この先左のエレベーターをおりて、歩道橋の先のエレベーターをおりれば、改札です」と案内されて、どれだけの方がたどりつくでしょうか。
実際、「この先左のエレベーター」をおりてみます。下りたところは、駅の外の歩道橋の上です。だから‥なのか、駅の内部の案内は一切なくなっています。いや、せめて、「○○方面」という案内が、視力の弱った方でもある程度認識できる大きさで記載されているのであればともかく、掲示は一切ありません(健常者でもみつかりません)。
もともと不安の中です。おりたところで案内がない不安という、心理状態に、設計や案内の配置を考えた方は気づいて配慮しているのでしょうか。答えは、気づいて配慮しているはずがない、という言葉につきます。
見渡すと、比較的近くに1基のエレベータがみつかり、少々離れたところにもう1基みえるかもしれません。しかし、その見える2つのエレベーターが、どこに向かっているのかがわかりません。
繰り返しになりますが、健常者ならば、両方近づいてみて確認することはたやすいことです。が、このお話しの前提は、近づくなどが困難な方です。
そして、現実は、近づいてみても、「上にいく」か「下にいく」かがわかるだけで、上にいくと続けて何ができるのか、下にいくと、横断歩道があって、歩道をとおると改札にいけるのか‥ということが、記載されていないのです。ただ虚しく、そのうちに1台には「エレベーター内で小便しないでください」とあるだけ‥。
日比谷線の位置をある程度しっていれば、ここであげた2基のエレベーターのいずれでもいけないことはすぐにわかります。なので、まずは1Fにおりないと近づけないと、エスカレーターでおりることにしましょう。ですが、もし、最初からこのエスカレーターを使うならば、一つ上の「この先の左のエレベーター」ではなく、「この先のエスカレーター」を下りた方が近かったようです。
おりた前には、交番がありました。
交番のお巡りさんは「ある程度」親切でした。でも、駅構内はそれほど熟知していないようです。そして、ある程度親切なだけですから、「ここから日比谷線には直接いくためには、(目の前の)階段をおりるか、エスカレーターならば、売店と切符売り場の裏側にまわっていった先にいかないとありません」という説明だけ。
いや、お巡りさんにそれ以上は求めるべきではないでしょう。最初の入谷の駅員さんが、状況がわかっているだろうし、駅構内(いや、かれにとっては駅構内であってもJRの管轄外ということだったのでしょうか)なのだから、車椅子などの手配を提案してもよいのではないかと思います。まぁ、それをここで思ってもあとの祭り。
健常な方ならば、目の前の階段(20段くらい)をおりていくと近いのに、地上1Fを、大きなキオスクと、大きな券売機のまわりをまわるように、その裏のエスカレーターに向かう他ありません。
そして、やっとの思いでそのエスカレーターをおりると、100m程度の歩行をへて、上記の健常者ならばおりられた目の前の階段を下りた場所にでます。歩行に自信のない人は、大きなキオスクと大きな券売機をおおきくまわる距離と、エスカレーターの場所の関係で100mも余計に歩く必要があるわけです。
そして‥そこから先は、2回に渡って、エレベーターもエスカレーターもない階段のある道がつづきます。それならば、最初から「当駅はバリアフリーには完全になっていません」と、最初に案内があればいいものを‥。
ついでながら、そうしてさらに300mくらい階段を含めてあるくと、日比谷線改札にたどりつきます。そして、その改札を入ると、地下鉄ホームまで、この改札には階段しかないのです。
長々書きましたが、
1)私はもともと障害者のために「○○を設置」「すればよい」にはどうしても違和感をおぼえて賛同できません。くだらない中途半端なバリアフリー施設の設置を求めるならば、職員を増やして、車椅子の用意や、車椅子を押す人間を配置することを義務づける方がよほど現実的だと思うからです。むしろ、スロープや手摺りのあるトイレやベッド(ホテルなどの場合)を義務づけるよりも、それに対応できる人の確保を義務づけた方がよほどマシではないでしょうか。
2)それは理想論としても、今の中途半端なバリアフリーが現実ならば、JRともあろう公共性の高い会社は、自主的に人員配置して欲しいし、また、駅員さん一人一人が、そのような目線で対応できる訓練は少なくともして欲しい。上記の例だと、「エレベーターやエスカレーターのある場所」を尋ねている時点で、それがスムーズに乗換られて、目的地にたどりつけないと意味がないことを察して、みずから尋ねて提案、あるいはそれが現在の設備でできないならば、車椅子などの手配を申し出るような訓練はできないものでしょうか。
3)節電で電気を暗くしたり、エレベーターをとめるのは仕方ないでしょう。でも、エレベーターなどの場所を尋ねる人は、必要な人です。そして必要な人に、「節電でとめているから目の前のそれではなくて、一つ先の階段の裏にあるそれを使ってください」という対応は妥当でしょうか。その尋ねた人だけのためにエスカレーターなどを一時的に動かす方がとられるべき措置ではないかと思います。
電気の暗さもしかるべきで、健常な目の方を基準に考えていては、危険は大きすぎです。暗くすることよりも、自動調光設備をとりつける、LEDにかえるなどはできないものでしょうか。
‥まして、節電でそれだけ電気をとめていれば、その分で人一人くらいは増やせるはずです!
4)ターミナル駅はターミナルです
JRの駅員がJRの改札の中だけ熟知していたのでは十分なサービスとはいえません。東京メトロへの乗換、バスやタクシー乗り場に、足の悪い方ならばどういけばよいのか、目の不自由な方ならばどういけはよいのか。少なくとも通常想定される弱者に似合った経路は、自社の外でも熟知しているべきだと思います。そして、通常想定されない弱者がいた場合には、付き添いや必要な施設を提供できるようにしておくことも、必要なサービスではないでしょうか。
と、これまた理想論です。
教訓として、
a)東京にいったらターミナル駅はつかわない
b)駅員と掲示はないものと思う
c)できるかぎり健常者が下見をする
d)(東京駅にいえること)5年もつづいている工事で、架設階段や歩道のために歩きづらいことを前提とすること(数日の工事でこれはやむを得ませんが、5年もつづく工事で、歩きづらい路面の架設をそのままつかっでいるというのは、暴挙としか思えません)
くらいまでしないと、公共交通機関は使えない、というのが結論でしょうか(すごく寂しい現実ですが)。
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