のんちゃん(nongun)の日記

庶民の楽しみも奪う

ビジネスで付加価値をつけて売り出すことは、商品開発、販売戦略として当然ですし、それは否定しません。考えてみると私の仕事もそういうことをしているわけですから。

でも、庶民の楽しみに目をつけて、旧来のやり方・売り方でほそぼそと楽しんでいるところに、大資本が参入して、だれも望んでいない付加価値をもっともらしくつける。そして、競争すれば、効率化された手法の方が生き残ってしまいますから、結果として、庶民の楽しみがなくなってしまう。

そんな構造のものが、最近増えているように思います。

実は私はラーメンが今、嫌いで食べられません。でも、昔は好きでした。そのラーメンが私の世代としてはその典型で、あれはマスコミがあおったとしか想えない。そのマスコミを利用したのは、ラーメンでもうけることしか考えていない輩。
私が高校生くらいの頃までは、ラーメンは３００円程度。よくたちよった赤羽駅のラーメンは１９０円だったし、阿佐ヶ谷のガード下は長らく２００円をキープしていました。そう、庶民のささやかな楽しみだった。

でも薄利多売ではいかんと、ラーメンの単価をあげたいと考えた偉い人がきっといたのでしょう。くだらないこだわり、だれも（当時は）のぞんでいない、不釣り合いな高級思考ラーメンを売り出して、それをブームにまずはもっていく。ブームになれば簡単です。それをなんでも右へならへの日本人は、そういうブームにのったものをおいしいといったり求めないと、変な奴と思われるかもしれないという脅迫観念におそわれて、誰もがそれがいいといいです。

その結果…ラーメンは高くなりました。
たしかに、今のラーメンは美味しいのかもしれない。でも、３０年前の味でいい、という人もきっと多数いるはず。むしろ、３０年前の味をより低コストでつくれるようにして、価格をさげる努力をしてくれればいいのに…と。そんな声がちらほら聞こえてくると「昔ながらの製法」とかいって、さらに現在の平均的な価格よりつりあげて昔っぽい味のものを売り出す。そうすると、これまた新しいもの（いや、古いもの）好きが飛びついて、それで儲かる…？

こうなると、もう価格上昇スパイラルです。仕掛け人のやりたい放題になっていく。そして、ラーメン博士だの、ラーメンの神様だのという、よくわからない「専門家」をまつりあげて、ますますもっともらしい論評をならべたてて、そのスパイラルを確固たるものにしていく。

と、言い出せばきりがないわけですが。

これが最近おきたと思うのが、コッペパンと中華まん。長らく８７円の普通のコッペパンが、「できたてなんとか」というＰＢで、コンビニが急に高価に売り出しました。今や１２０円くらいがあたりまえ（ただし、こっぺぱんは、スパイラルにはならず、最近は８７円だったコッペパンがちょっと値上げして返ってきていますが）。中華まんも、消費者があきたならあきたでいいじゃないか、と思うのですが、やれピザだ、カレーだ、酢豚だ…と、まずは種類をふやして、７０円があたりまえだったのが、いつのまにか１００円時代に。そして、旧来の肉・あん饅も価格をあげるために、高級版をまずは販売して、どんどん実質的な値上げをしていく。

そうそう、ミスドもそうですね。ホームカットが最近はそもそもうっていないし、あっても高級版のそればかり。

カレーライスも今、その仕掛けにかかっているようですが、カレーはまだ、庶民の味を防御している感じがします。スープだ緑だ、エキゾチックだ…といろんなものを出して、ちょっとづつ高いものを売り出していますが、今一つ定着していない。この辺は、仕掛け人がラーメンよりも能力がないだけじゃないだろうか。
高級食材つかってカレーをつくってもうまくなるとはかぎらないあたりが、ラーメンとはちがうのかもしれません。１０年くらい前でしょうか。究極のカレーをつくるというテレビの特集で、全国各地の最高食材を集めてカレーをつくる話がありました。でも、正直なゲストの感想は、（具として入っている）伊勢海老は伊勢海老だけでたべた方がうまい、なんてコメントも出たりして。
なんでも高級品を使って組み合わせればうまいわけではないのはいうまでもなく、肉じゃがに最高級フィレ肉を使ったり、寿司に玉露をあわせるようなものです。

ちょっと脱線しましたが、庶民が庶民の味とか楽しみとしてほそぼそと、不器用なやり方で楽しんでいるものを、勝手に突然高級思考にしたり、合理化して、うばって欲しくないな、と思うのです。

そういうもの、見渡すとたくさんありませんか？

今週は２度も、かわらぬ味・たい焼きの新品種（あたらし味）の開発もあり、不景気につよいたい焼きが売れているというニュースをみました。ああ、たい焼きよお前もか、と思いながら、こんなことを考えていたのでした。十勝の最高級小豆を使わなくても結構です。国産お菓子であるたい焼きにくだらない最高級バターをくわえたりして価格をつり上げるようなことなく、たい焼きはたい焼きで食べられる時代が続いてほしいと、実は強く思うのでした。

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