のんちゃん(nongun)の日記

体罰でないとの判決

最高裁で逆転判決がでたというのは、昨日のニュース。
女子生徒を蹴飛ばしていた生徒を指導した教師を蹴飛ばした男子生徒の胸ぐらをつかんで壁に押しつけて大声で叱ったのが体罰かどうか、ということで、体罰でないとの判決が出た、というのが、あらましでしょうか。

体罰は、目的、状況、継続時間を考慮して、体罰か否かを判断する、という基準も提示してのもので、おそらくは、このように目的や状況を考慮することを基準とすることに反対する人は、それほど多くはないと思います。ただ、なにごとも、この目的と状況と継続時間を考慮する要素として明示したのは一歩前進でも、では、どんな目的とどんな状況で、どのくらいの時間（この時間も、目的や状況で流動的なのかどうかもふくめて）ならばいいのか、悪いのか。これがこれからの課題になるのかな、と思います。

さて、この事件については、私はもう法律の勉強からはずれて相当期間がたちますし、相談案件として、体罰の相談や学校の姿勢、対応に関する相談を受けたことがある程度です。が、もう一つ、今のところ、子供がいないので、親としての当事者にはなったことがないという環境です。

ただ、子供が参加するイベントにそんな中で参加すると、親への姿勢や教師への姿勢は、これでいいのか？　と思うくらい、私にとっては違和感があるものでした。ですから、判決文原文もみていないし、この事件の現場にいたわけではないですから、あくまでも感想ではあるものの、女子児童を蹴飛ばし、教師を蹴飛ばした生徒に、この程度の行為は指導として認められてもよいのかな、とは思いました。

さてさて、この日記にこの案件の感想を書こうと思ったのは、以上の感想ではありません。
ＩＴの怖いところであり、すごいところが、翌日の今現在で、普通に検索サイトでこの事件に関するコメント…いわゆる有識者のそれも、私のように一市民の感想も、ぞろぞろと出てきます。その傾向をみていて感じたのが、この訴訟をした親への誹謗中傷とも思える感想もあること。

上記のとおり、当事者ではないことを私は強調して感想を書きましたが、当事者の気持ちにたって、というのも必要な側面のように思います。実際、今の使いづらい日本の訴訟制度の中で、訴訟に至るのは、ちょっと言葉が悪いかもしれませんが、まともな精神状態ではできない、と私は思っています。相当な覚悟が必要で、その覚悟をするきっかけは、ときには精神的に不安定になって、見境がつかないような状況にならない限り踏み切れないことすらあると思います。でも、そういう状態になってしまうことは、当事者でないと本当のところはわからない。そして、客観的にみればおかしな訴訟（って、たくさんあります。なんでこんなくだらないことにこだわったの？　って。裁判マニアのようなケースもあるし、弁護士が判例を作るためにやったとしか思えない訴訟てとか…）でも、その当事者が訴えを提起したことを非難するのはいかがなものかな、と、この案件だけでなくても思うことがあります。（ちなみに、私は訴訟のハードルは高くてよいと思っています。被告はもちろんのこと、原告の近くの人にも多大な影響がある行為ですから、おいそれと気楽にできることはかえってマイナスだと考えているからです。が、法治国家として、司法サービスの提供は当然ですし、憲法３２条の保証もありますから、訴訟という形態以外の司法サービスの充実がそのかわりに必要だというのは、私の考え方からはいうまでもないことです）。

当事者、訴えを提起したことへの批判といえば、有名な隣人訴訟など、その典型だと思います。私は事件を専門誌などで知っただけですから、悲劇の一つという見方、側面しかしりませんが、訴訟制度の限界、訴訟観と国民性との乖離ｅｔｃ．そして、裁判をするということがどれだけ大きなインパクトを多方面にあたえ、それが一度ゆがんでしまうと、悲惨な結果をまねくものだ、ということをつくづく感じるケースです。

今のところ、昨日の原告の親に対する誹謗中傷は、ブログなどでみられるだけですが、このような親が訴訟に踏み切ったことも非難するような論調の記事や報道がもしも少しでも出てくるのであれば、それこそ、裁判員制度うんぬんの前の、訴訟制度そのものの見直しが必要な問題にならないか、と感じたのが、この感想を書いたきっかけです。

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